ドキュメンタリー映画『靖国の檻』(DVD・上映時間65分)


2006
8月、我が国の裁判史上初めて、靖国神社を相手取って戦没者の合祀取り消しを求めた裁判が提訴された。
この歴史的な裁判の意味と原告の内面を描いたドキュメンタリーがこの程完成した。
8人の原告は、この裁判をいかに闘ってきたのか。そして己が内面といかにして向き合ってきたのか。
大阪靖国合祀取り消し訴訟原告団団長菅原龍憲が、関西、四国、北陸に暮らす原告を訪ね、その内面に鋭く切り込んだ渾身のロードムービー。
今、「日本人」が問われる。
20112月発売

販売価格 2,500円(10枚以上で2割引)消費税・送料込
発行所 2010「靖国の檻」制作委員会
支払方法 代金先払い(郵便振替)※振込手数料はご負担ください。
ご注文は FAX 0854-82-1463またはE-mail ryuken5@world.ocn.ne.jp
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【映画所感】    ドキュメンタリー靖国の

―近現代の日本の最大の核心を突く地点にたどり着いた人々―

作家 田中伸尚

遂に完成しましたね。拝受いたしました。ありがとうございました。とても楽しみで、すぐ観るのが怖いような・・・

映像の持つ求力(そきゅうりょくに圧倒されました。ナレーター役の菅原さんの語りが、巧みに配置されていて構成力にも感心しました。挿入音楽が、ホルスト、エルガー、ドボルザークらで、妙な感情を(あお)らずに影のようで、なかなかのものでした。

8人の語りと表情を聴き、観て、何十年の道のりの果てに、近現代の日本の最大の核心を突く地点にたどり着いた人びとがここにいると、改めて思いました。

それでいて8人には、肩をいからせたところがなく、自然体なんですね。曖昧さとか迷いを抱えているところも実によく出ています。決して何もかもをすっきりさせて「世紀の訴訟」に挑んでいるのではないことも、じんわり伝わってきます。

(きくちさんの話を聴きながら、「感情の錬金術(れんきんじゅつ」には(はま)らずに「生きていてほしかった」という遺族のほうが実は多く、その本音が時間とともに沈潜させられてきたという実相を新たに教えられました。再発見といっていいかもしれません。さらに言えば「感情の錬金術」でいいのかという疑問さえ湧いてきました。

冨樫(とがし)さんのお母さんの「腹が立って・・・いらいらするんですよね」という言葉は、私も何度か聴いていますが、行慶さんがそれを拾って夫への愛情の深さだと思うと言われていたのが、とても印象的でした。その率直で素直な感情を圧殺しているのが靖国!という彼の呟きもまた口調の静かさとは逆に迫力があったなあ。菅原さんはじめ熱い心情を持った人たちの中から抜け出したくないという彼の(ことば)は、詩人のパッションが響いていました。

菅原さんがお母さんの話を語っているシーンで中納戸へつながっている廊下が出てきますが、私は写真を見なかったお母さんが夫の戦死公報の紙を抱きかかえて嗚咽慟哭顔した姿を思い浮かべて泣きそうになってしまいました。最後の靖国神社で、また来ますかと問われて、しばらく考えて、合祀が続く限り来るでしょうと言われた菅原さんの「靖国の檻」との闘いは、「見果てぬ夢」なのかとも思い、居ずまいを正しました。

「未完の旅」かもしれませんが、冒頭のナレーションにあるように歴史に残る訴訟です。そしてこのような記録を残された菅原さんはじめ原告の皆さんに私は心から深い敬意を表します。多謝!多謝!(201136